糖尿病が「治った」は本当?病院をやめる前に知っておくべきこと

食べてもいい糖質制限/血糖コントロール 糖尿病は健康診断ではわからない?糖尿病かな?自覚症状/血糖値が高かった 血糖値が気になる方に無理なく続けられる血糖コントロールプログラム|倉本亜希 | 糖尿病が「治った」は本当?病院をやめる前に知っておくべきこと

「知り合いが糖尿病を治して、もう病院に行っていない」——そんな話を聞いたことはありませんか?

以前、私の講座を受講してくださった方から、こんな相談を受けました。「身近に糖尿病と診断されたのに、知り合いが治ったからと言って自己判断で病院をやめてしまった人がいるのですが、どうしたらよいでしょうか?」

この種の相談は、実は1人や2人ではありません。これまでいただいたお悩みの中でも、最も多いご相談のひとつです。糖尿病の管理は長期にわたるため、「もう大丈夫だろう」「薬をやめても平気だろう」と感じてしまう瞬間は、誰にでも訪れます。しかしその判断が、取り返しのつかない事態を招くことがあります。

この記事では、糖尿病と診断された方やその家族が正しく理解しておくべき「血糖値の数値」「自覚症状の落とし穴」「健康診断ではわからないこと」「糖質制限の正しい知識」について、わかりやすく解説していきます。


まず確認してほしいこと——「病院をやめた」のは誰の判断か

糖尿病の患者さんが病院に通うのをやめている場合、必ず確認してほしいことがあります。それは、「医師の指示でやめたのか、それとも自己判断でやめたのか」という点です。

医師が「通院の頻度を下げてよい」「薬を減量してよい」と判断した上でのことであれば、ある程度安心できます。血糖値の数値が安定し、生活習慣の改善が十分に確認できた場合、医師の管理のもとで薬の減量や通院間隔の調整が行われることはあります。

しかし問題なのは、自己判断で「もう大丈夫」と決めて病院をやめてしまうケースです。これは非常に危険であり、知らず知らずのうちに深刻な合併症へと進んでしまうリスクがあります。


糖尿病の自覚症状がないことの危険性

糖尿病が恐ろしい理由のひとつは、「糖尿病の自覚症状」がほとんどないまま進行するという点です。

血糖値が高い状態が続いていても、初期のうちは体にそれほど強い症状が出ません。「のどが渇く」「尿が多い」「疲れやすい」といった変化があっても、日常の疲れや加齢のせいにしてしまいがちです。

だからこそ「体の調子は悪くないし、もう病院に行かなくてもいいかも」という自己判断が生まれやすいのです。しかし実際には、自覚症状がないまま血糖値は上がり続け、血管や神経にじわじわとダメージが蓄積されていきます。

糖尿病の三大合併症と呼ばれる「糖尿病性網膜症(失明のリスク)」「糖尿病性腎症(透析のリスク)」「糖尿病性神経障害(足の壊疽など)」は、どれも自覚症状が出にくい段階から静かに進行します。自覚症状がないからといって、安全とは言い切れないのです。


健康診断ではわからない糖尿病の真実

「健康診断で引っかからなかったから大丈夫」と思っている方も多いですが、実は「糖尿病は健康診断ではわからない」ケースが存在します。

一般的な健康診断で測定される血糖値は「空腹時血糖値」が中心です。しかし糖尿病の診断において非常に重要なのは、食後の血糖値の上昇具合です。食後に血糖値が急激に上昇する「食後高血糖」は、空腹時の検査では見落とされることがあります。

また、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という過去1〜2ヶ月の平均血糖値を示す指標も、糖尿病の診断には欠かせません。空腹時血糖値が正常範囲内であっても、HbA1cが基準値を超えていれば糖尿病の疑いがあります。

さらに、境界型糖尿病(糖尿病予備群)の段階では、血糖値の数値が正常範囲内に収まっていることもあり、「健康診断ではわからない」まま放置されてしまうことも珍しくありません。

だからこそ、「健康診断で問題なかったから糖尿病ではない」という判断は非常に危険です。気になる症状や家族歴がある方は、専門的な検査を受けることをおすすめします。


実際にあった事例——薬をやめたらどうなったか

私が以前一緒に働いていた方の夫が、糖尿病を患っていました。しばらく治療を続けた結果、血糖コントロールが良好になり、「このまま薬の服用をやめてみよう」という判断をしたそうです。

しかし、薬をやめた途端に血糖値が急上昇してしまいました。あわてて薬の服用を再開することになったのですが、その短期間でも血糖値が不安定な状態に陥っていたのです。

当時は「そういうものか」と軽く捉えていましたが、今振り返ると、これは非常に示唆に富んだ出来事だったと感じます。薬で血糖値を安定させられていたのは、あくまでも「薬の力があったから」であり、薬をやめれば元の状態に戻ってしまう——これが糖尿病の怖さのひとつです。


糖尿病は「完治」ではなく「寛解」

ここで非常に重要な概念を押さえておきましょう。糖尿病は「完治」が難しい病気です。ただし「寛解」は可能です。

「寛解」とは、薬を使わなくても血糖値が正常範囲に保たれている状態を指します。厳格な食事管理や運動習慣、体重コントロールによって、薬なしで血糖値を維持できるようになるケースもあります。しかしそれは「糖尿病が消えた」わけではなく、「適切な管理によって症状が抑えられている」状態に過ぎません。

「知り合いの糖尿病が治った」という話も、この「寛解」の状態を指していることがほとんどです。医師の管理のもとで、食事・運動・場合によっては薬を組み合わせながら、血糖値の数値を正常に保っているのです。

寛解を維持するためには、継続的な生活習慣の管理と定期的な医療機関のチェックが欠かせません。「治った」という言葉を鵜呑みにして通院をやめることは、再び血糖値が上昇するリスクと背中合わせです。


糖尿病と糖質制限——正しく理解していますか?

血糖値のコントロールに効果的な方法として、近年注目されているのが「糖尿病と糖質制限」の組み合わせです。糖質を制限することで食後の血糖値の急上昇を抑え、インスリンの分泌を穏やかにする効果が期待できます。

ただし、糖質制限には正しい知識と適切な実施が必要です。糖質をゼロにすれば良いというわけではなく、必要な栄養素を確保しながら、過剰な糖質摂取を抑えることが重要です。

特に注意が必要なのは、薬を服用中の糖尿病患者さんが自己判断で糖質制限を始めた場合です。血糖値が急激に下がりすぎる「低血糖」のリスクがあるため、必ず医師や管理栄養士に相談した上で取り組む必要があります。

また、糖質制限の効果は個人差が大きく、血糖値の数値の変化も人によって異なります。「糖質制限で糖尿病が治った」という体験談をそのまま自分に当てはめることは危険です。自分の血糖値の数値を定期的に確認しながら、専門家のサポートを受けて進めることが大切です。


血糖値の数値——何を見ればいいのか

糖尿病の管理において、「血糖値の数値」は最も重要な指標です。主に確認すべき数値は以下の通りです。

空腹時血糖値は、食事をとらずに一定時間経過した後に測定する血糖値です。正常値は110mg/dL未満とされ、126mg/dL以上が続く場合は糖尿病の診断基準に該当します。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、過去1〜2ヶ月の平均的な血糖値の状態を反映する指標です。正常値は5.6%未満とされ、6.5%以上が糖尿病の診断基準とされています。薬を服用したり食事に気をつけたりした「その日だけの数値」ではなく、長期的な血糖コントロールの状態を知ることができます。

食後血糖値は、食事の後に血糖値がどこまで上昇するかを示します。食後2時間の血糖値が140mg/dL以上になると「食後高血糖」とされ、健康診断の空腹時検査では見落とされやすい数値です。

これらの数値を定期的にチェックし、医師と相談しながら管理していくことが、糖尿病との長期的な付き合い方の基本です。


日常の食生活こそ、最大の治療

病院に通っていても、日常の食生活が乱れていれば、血糖値のコントロールは難しくなります。逆に言えば、毎日の食事と生活習慣を整えることは、薬と同じくらい——いや、それ以上に重要な治療行為です。

血糖値が安定しやすい食事のポイントは、糖質を急激に摂取しないことです。白いご飯やパン、甘い飲み物などは血糖値を急上昇させやすい食品です。これらを控えめにし、食物繊維の多い野菜や豆類、たんぱく質を先に食べる「食べる順番」を意識するだけでも、食後の血糖値の上昇を穏やかにする効果があります。

また、適度な運動も血糖値コントロールには欠かせません。食後30分程度のウォーキングは、食後の血糖値の上昇を抑えるのに効果的です。激しい運動でなくても、毎日続けることが大切です。


まとめ——「治った」という言葉に惑わされないために

糖尿病の管理は、短距離走ではなくマラソンです。一時的に血糖値が安定したからといって、自己判断で通院や服薬をやめることは非常にリスクが高い行動です。

周りに「糖尿病が治った」と言って病院に行っていない人がいれば、まず「医師の指示があってのことか」を確認してみてください。そして自己判断でやめているのであれば、もう一度医療機関を受診するよう促してあげてください。

糖尿病の自覚症状のなさ、健康診断ではわからない食後高血糖の存在、血糖値の数値の正しい読み方、糖質制限の適切な活用——これらを正しく理解することが、糖尿病と上手に向き合う第一歩です。

血糖値が安定しやすい食事について、もっと詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。あなたの生活スタイルに合った無理のない方法を、一緒に考えていきましょう。

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